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「てんきや」コラム

#15: 衛星食

最近、国際宇宙ステーションで食べるカップメンが開発されたそうですが、今回の話題はそういう宇宙食のことではなく、人工衛星の「食」の話です。

最近、テレビの天気予報で雲の動きを見たときに、夜中の画像が無くなっているのに気付きましたか? 現在、衛星雲画像は気象衛星ひまわりの代替機であるGOES-9(日本名、パシフィック・ゴーズ…という名前もまったく定着していませんが)が観測を行っていますが、今回の現象はGOES-9の故障とかそういうわけではありません。

(上)春分/秋分の夜の静止衛星の位置
(下)冬の夜の静止衛星の位置    

静止衛星であるGOES-9は、軌道上を地球の自転と同じ速度で回っていて、常に東経155度に位置しています。赤道上の東経155度の地点が真昼のときにはGOES-9太陽に最も近く、逆に真夜中に太陽から最も遠くに位置することになります。

さて、春分の日と秋分の日には太陽は赤道の真上に位置するため、真夜中になると右図(上)のように太陽地球GOES-9が一直線に並ぶことになります。このとき、GOES-9から見ると太陽地球になって見えなくなってしまいます。これが衛星食。原理的には地球から見える日食や月食と全く同じことです。ちなみに、地球の自転軸が傾いているおかげで、夏や冬には右図(下)のように真夜中でも地球のには入らないため食とはなりません。

気象衛星は地球を観測するためのものだから太陽が見えなくても問題無さそうですが、実はこれが大問題。GOES-9は太陽電池のエネルギーで動いているため、日が当たらなくなると搭載している機器が使えなくなってしまいます。最近の衛星はこういう時のために充電池を搭載しているのですが、そこは打ち上げ以来8年も経ったGOES-9のことですから。また、太陽・地球・GOES-9が一直線に並ぶと、地球の背後に太陽があるため逆光になってしまい観測に支障がある、という事情もあるようです。

というわけで気象庁の発表によると、8月13日〜11月1日の間は23時(日本時間。GOES-9の場所の深夜0時が日本標準時では夜11時前に当たるため)の前後の観測が休止されることになっています。2ヶ月半もの長期にわたって観測に支障があるというのは、特に台風が接近している時などは非常に困ったことですが、借り物のパシフィック・ゴーズなので文句も言えません。春の食期間までには後継機の打ち上げが無事に済んでいることを祈るばかりです。


(2003/8/22)
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