「てんきや」コラム

#35: 台風のアジア名

今年もそろそろ台風シーズン。昨年のような頻繁な上陸は今のところありませんが、これまでに台風7号(バンヤン)が房総半島に上陸したほか台風5号(ハイタン)台風9号(マッツァ)が沖縄・先島諸島に被害を及ぼしています。

さて、バンヤン・ハイタン・マッツァなどと書きましたが、これらはそれぞれの台風につけられた名前です。以前のコラム「ソウデロア」でも書きましたが、2000年から北西太平洋領域で発生した台風に名前がつけられることになりました。14の国・地域が10個ずつの提案した140個の名称が決められており(台風のアジア名のリスト)、これが発生順に付与されていきます。141個目の台風(順当にいけば今年の台風18号?)には、2000年台風1号と同じ「ダムレイ」の名前が付けられます。

気象庁ホームページの台風の番号と名前のページには台風の名称と簡単な意味しか記載されていませんが、例えば中国が命名した「ロンワン」(龍の王)についてWMO(世界気象機関)のSevere Weather Information Centerのページには伝説上の雨を司る神で、かつて人々は生贄を捧げ雨乞いや豊穣を願ったというような詳しい説明が書かれていて、各国がそれぞれ思いを込めて台風の名前を選定したことがうかがえます。前述の台風のアジア名のリストにはこれらの詳細な意味も掲載しているので、眺めてみるだけでも色々な発見があるかもしれません。

ところで、台風にアジア名が付与されない例外があります。それはハリケーンが台風に変わった場合。そもそも台風とは 熱帯の海上で発生する低気圧を「熱帯低気圧」と呼び,このうち北西太平洋で発達して中心付近の最大風速がおよそ17m/s(風力8)以上になったもの 気象庁ホームページ「台風とは」 のことです。ここで言う「北西太平洋」とは東経180度線よりも西側の地域で、これより東側の地域の熱帯低気圧はハリケーンと呼ばれます。さて、ハリケーンにもリストから名前が付けられていますが、北東太平洋で発生したハリケーンが西へ進み、東経180度線を越えて北西太平洋へやって来た場合はどうなるのでしょうか? この場合、同じ熱帯低気圧に2つの名称があると何かと不便ですので、ハリケーンだった時の名称がそのまま付与されます。最近では2002年台風17号(Ele)2002年台風24号(Huko)がこの例にあてはまり、それぞれアジア名ではなくハリケーンの名前がそのままつけられています。

最近はテレビの天気予報などでも台風のアジア名が紹介されるなど、徐々にではありますが台風のアジア名が普及しつつあります。大きな被害で台風の名前が印象づけられるのは遠慮したいところですが、名前を通して台風に対して興味を持つ人が増えて防災意識の高まりにつながればと思います。

(2005/8/8)
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